SNGから紡ぎだされたブログです。 - 新月の夜を経て、空は黎明を迎えゆく -
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
過去編 その2
望むもの。望めないもの。
出来ることと出来ないこと。
輝く世界と失っていく世界。
あなたとわたしはこんなに近くにいるのに こんなにも見ている世界が違うなんて。
知らなかった。
出来ることと出来ないこと。
輝く世界と失っていく世界。
あなたとわたしはこんなに近くにいるのに こんなにも見ている世界が違うなんて。
知らなかった。
飛べない鳥に、生きている喜びがあるのだろうか。
冷たい鉄の棒が円を描くように立てられた檻の中に、わたしはいる。
その冷たさに初めて触れた時、奈落の底に落ちたような気がして泣いた。
自由を取り上げたのがよりによって彼だから。という理由だけではなくて、
彼を想う気持ちを否定され拒絶されたように感じられたから。
そんなわたしを見て彼は檻の隙間から両手を伸ばし、頬を包んだ。
「ごめん…。君に傷ついてほしくない…失いたくないんだ」
辛そうに歪められた表情に戸惑う。
わたしだってそう思っているし願っている。
なのにあなたは、わかってくれないの?
今わたしを、わたしの心を傷つけているのは、あなたなのに?
彼の手をすがるように掴む。
「だったらどうしてこんな。
わたしだってあなたのためにできることがあるならしたいと思うわ…。それは罪なの?」
違うでしょう…? と彼の瞳を見つめる。
何かを強く言おうと口を開いた彼は、言葉を飲み込んで頭を振った。
「病だとわかってから、もう覚悟はできている。…頼むから揺さぶらないでくれ。
君と出会って生きている喜びを知った。…未来を望みそうになる…。それが怖いんだよ。
時間をかけて諦めてきたものに手を伸ばすのは…とても…とても苦しいことなんだ…」
「…わたしがしたことは、あなたを苦しめるだけだというの?」
彼は悲しそうに笑った。
…すごく苦しい。お願いだからそんな顔をしないで。
すっと頬に触れる。
生と死への葛藤の中で未来を諦めた彼。
ずっと一緒にいたいから生きていてほしいと願うのはエゴだろうか。
わたしが彼の心を掻き乱して苦しめている。
それしかわからない。
どうするべきなのか、わたしの想いはどこへ行ったらいいのか、何が正しいのか。
「未来は望めない…僕の未来をあげることはできないけれど、現在なら望める。
君と一緒にいる現在だけ、望むことができる。
だから僕から君を奪わないでほしい。今の僕に残るたった一つの望み…大切な君だから」
…わたしはわたしの未来をあなたに捧げられるのに。未来を望んではくれないの?
瞳から熱い雫が零れる。喉が詰まったみたいに苦しい。
未来を望んでくれないけれど。 それはすごく悲しくて辛い。
「わたし」を唯一望んでくれる。
病に蝕まれた彼にできる最大のこと。それが「わたしとの時間を望むこと」。
こんなにも違う。
わたしができることと、彼ができることが。
当たり前のように私が望めることが、彼にとっては難しいなんて。
声にならなくて泣くことしかできなかった。
彼はなだめるようにわたしの手をとり、手のひらにキスを落とす。
悲しく、辛そうに。けれど優しく。何度も何度もキスをする。
包むように、慈しむように、守るように、なだめるように。
キスの度に流れ込んでくる心が、わたしの心に降り積もる。
「ごめんなさい…ごめんなさい…。
わたし…わからなかったの。こんなに違うなんてわからなかった。
傷つけてごめんなさい。苦しい思いをさせてごめんなさい」
それしか言葉を知らないみたいに、「ごめんなさい」と繰り返す。
カシャン
鍵の外れる音。
檻の扉が開いて、彼の近づく気配。
両手をついて項垂れるわたしの左手と顎を手にとって上向かせる。
「こんなことをしてごめん。…悲しい思いをさせてごめん」
また、泣きたくなる。
「君の気持ちはわかったから。もういいんだよ。ありがとう、未来を望んでくれて」
微笑んだ彼の表情はこの世のものとは思えないくらいに美しかった。とても綺麗。
わたしの腕の中にずっとしまっておきたくてぎゅっと抱きしめた。
大切にしよう。
この人と過ごす時間を。この人の残された命を。
この人が落としてゆく命の欠片さえも。
冷たい鉄の棒が円を描くように立てられた檻の中に、わたしはいる。
その冷たさに初めて触れた時、奈落の底に落ちたような気がして泣いた。
自由を取り上げたのがよりによって彼だから。という理由だけではなくて、
彼を想う気持ちを否定され拒絶されたように感じられたから。
そんなわたしを見て彼は檻の隙間から両手を伸ばし、頬を包んだ。
「ごめん…。君に傷ついてほしくない…失いたくないんだ」
辛そうに歪められた表情に戸惑う。
わたしだってそう思っているし願っている。
なのにあなたは、わかってくれないの?
今わたしを、わたしの心を傷つけているのは、あなたなのに?
彼の手をすがるように掴む。
「だったらどうしてこんな。
わたしだってあなたのためにできることがあるならしたいと思うわ…。それは罪なの?」
違うでしょう…? と彼の瞳を見つめる。
何かを強く言おうと口を開いた彼は、言葉を飲み込んで頭を振った。
「病だとわかってから、もう覚悟はできている。…頼むから揺さぶらないでくれ。
君と出会って生きている喜びを知った。…未来を望みそうになる…。それが怖いんだよ。
時間をかけて諦めてきたものに手を伸ばすのは…とても…とても苦しいことなんだ…」
「…わたしがしたことは、あなたを苦しめるだけだというの?」
彼は悲しそうに笑った。
…すごく苦しい。お願いだからそんな顔をしないで。
すっと頬に触れる。
生と死への葛藤の中で未来を諦めた彼。
ずっと一緒にいたいから生きていてほしいと願うのはエゴだろうか。
わたしが彼の心を掻き乱して苦しめている。
それしかわからない。
どうするべきなのか、わたしの想いはどこへ行ったらいいのか、何が正しいのか。
「未来は望めない…僕の未来をあげることはできないけれど、現在なら望める。
君と一緒にいる現在だけ、望むことができる。
だから僕から君を奪わないでほしい。今の僕に残るたった一つの望み…大切な君だから」
…わたしはわたしの未来をあなたに捧げられるのに。未来を望んではくれないの?
瞳から熱い雫が零れる。喉が詰まったみたいに苦しい。
未来を望んでくれないけれど。 それはすごく悲しくて辛い。
「わたし」を唯一望んでくれる。
病に蝕まれた彼にできる最大のこと。それが「わたしとの時間を望むこと」。
こんなにも違う。
わたしができることと、彼ができることが。
当たり前のように私が望めることが、彼にとっては難しいなんて。
声にならなくて泣くことしかできなかった。
彼はなだめるようにわたしの手をとり、手のひらにキスを落とす。
悲しく、辛そうに。けれど優しく。何度も何度もキスをする。
包むように、慈しむように、守るように、なだめるように。
キスの度に流れ込んでくる心が、わたしの心に降り積もる。
「ごめんなさい…ごめんなさい…。
わたし…わからなかったの。こんなに違うなんてわからなかった。
傷つけてごめんなさい。苦しい思いをさせてごめんなさい」
それしか言葉を知らないみたいに、「ごめんなさい」と繰り返す。
カシャン
鍵の外れる音。
檻の扉が開いて、彼の近づく気配。
両手をついて項垂れるわたしの左手と顎を手にとって上向かせる。
「こんなことをしてごめん。…悲しい思いをさせてごめん」
また、泣きたくなる。
「君の気持ちはわかったから。もういいんだよ。ありがとう、未来を望んでくれて」
微笑んだ彼の表情はこの世のものとは思えないくらいに美しかった。とても綺麗。
わたしの腕の中にずっとしまっておきたくてぎゅっと抱きしめた。
大切にしよう。
この人と過ごす時間を。この人の残された命を。
この人が落としてゆく命の欠片さえも。
PR
COMMENT